2026年1月13日公開(2026年1月13日更新)

老後破産とは?知っておくべき現状や原因・起こしやすい人の特徴、対策方法を詳しく解説

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2026年1月13日時点の情報となります。

老後破産とは?知っておくべき現状や原因・起こしやすい人の特徴、対策方法を詳しく解説
荒木 和音(あらき かずね)

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荒木 和音(あらき かずね)

保険代理店での個人向け家計相談や企業のリスクコンサルティングを経て、金融専門ライターとして独立。現在はWEBメディアを中心に、クレジットカードやカードローン、資産運用などに関する記事を幅広く執筆している。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。

人生100年時代という言葉が浸透するなか、老後の生活設計の必要性はますます高まっています。一方、高齢になってから経済的に困窮してしまう老後破産という言葉も広まりつつあります。ご自身の将来の生活に不安を感じる方も少なくないでしょう。

本記事では、老後破産の実態や主な原因、破産を避けるための具体的な対策について、詳しく解説します。

1. 老後破産とは?急増する「老後の貧困」の実態

老後破産とは一般的に、定年退職後などの老後生活において収入が減少し、経済的に困窮して生活の維持がむずかしくなる状況を指します。

実際、自己破産をする高齢者は増加傾向にあります。日本弁護士連合会の 「2023年破産事件及び個人再生事件記録調査」 によると、全破産債務者のうち60代は16.71%、70代は11.84%を占めています。70代以上の割合は、調査開始以来最も高い数値となりました。

上記の数値はあくまで自己破産をした方の数であり、法的な手続きはとっていないものの年金収入だけでは家賃や光熱費、食費など最低限の支出をまかなえず、生活が破綻しているケースもあると考えられます。実質的に老後破産の状態にある方は、統計上の自己破産者数よりも多いと考えたほうがよいでしょう。

高齢者世帯の経済状況は二極化しています。金融広報中央委員会の 「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」 によると、60代の二人以上世帯の金融資産保有額は平均で2,026万円(70代は1,757万円)。一方、金融資産を保有していない世帯も21.0%(70代は19.2%)存在します。

老後破産とは?知っておくべき現状や原因・起こしやすい人の特徴、対策方法を詳しく解説

2. 老後破産するとどうなるの?

老後破産すると、日々の食費を極端に切り詰めるなど、生活水準の低下は避けられなくなります。また、必要な医療や介護サービスを受けたくても、費用負担を理由に利用を控えてしまうケースも少なくありません。受診を控えることで病状が悪化し、結果としてさらに高額な医療費が必要になるといった悪循環に陥るケースもあります。持ち家がある場合は、固定資産税や維持費の支払いが困難になり、最終的にマイホームを手放すことになるかもしれません。

住まいや生活費の工面がむずかしくなった場合、まずは子どもや兄弟姉妹など親族に支援を求めることが多いですが、支援を受けられない場合は生活保護を受けることになります。

生活保護とは、資産や能力などすべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助長する制度です。厚生労働省の 「被保護者調査(令和7年8月分)」 によると、生活保護を受給している世帯のうち約55%が高齢者世帯であり、高齢者の貧困の深刻な状況を反映しています。

なお、生活費などに充てる生活扶助の基準額は以下のとおりです。

東京都区部など 地方郡部など
高齢者単身世帯(68歳) 7万7,980円 6万8,950円
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳) 12万3,460円 10万9,720円

※令和7年10月1日時点

出典:厚生労働省「「生活保護制度」に関するFAQ」

3. 老後破産が起こる主な5つの原因

老後破産に至る背景には、以下のような共通する原因があります。

  • 生活レベルが現役時代と変わらない
  • 収支の管理ができていない
  • ローンの返済が残っている
  • 予想外の支出が発生した
  • 世帯収入が減少した

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3.1 生活レベルが現役時代と変わらない

定年退職後は現役時代に比べて収入が減るケースが一般的です。

国税庁の 「令和6年分 民間給与実態統計調査」 によると、会社員などの平均給与は478万円で、月収に換算すると約40.6万円です。一方、老後の主な収入源となる年金受給額(月額平均)は以下のとおりです。

  • 厚生年金(月額平均): 14万7,360円
  • 国民年金(月額平均):5万7,700円

出典:厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

このように、現役時代の平均月収(約40.6万円)と老後の厚生年金受給額(約14.7万円)には大きな開きがあります。にもかかわらず現役時代と同様の生活レベルを維持しようとしたり、支出が多かったりするために、年金収入だけでは家計が大幅な赤字になってしまうのです。

3.2 収支の管理ができていない

年金収入だけで生活できない場合は、それまで蓄えてきた貯蓄を切り崩しながら生活することになります。しかし、収支の管理ができていないと想定よりも早く貯蓄が底をつく恐れがあります。

たとえば、退職金でまとまったお金が入ったからといってリフォームや新車の購入、海外旅行などの大きな支出を続けてしまうと、短期間で貯蓄が大きく減ってしまいます。アルバイトやパートなどで収入を得る方法もありますが、現役時代と同様に働けるとは限りません。その結果、家計の赤字が続き、老後破産に陥ってしまいます。

3.3 ローンの返済が残っている

住宅ローンやカーローン、子どもの教育ローンなどの返済が、退職後も残っている場合、老後破産のリスクが高くなります。

特に住宅ローンは返済期間が長いため、定年後も返済が続くケースが少なくありません。現役時代と比べて収入が減った状況で、以前と同じ金額の返済を続けると、家計に余裕がなくなってしまうでしょう。

3.4 予想外の支出が発生した

老後には、現役時代には想定していなかった大きな支出が発生するリスクがあります。代表的な支出が医療費や介護費です。厚生労働省の調査によると、一生涯にかかる医療費2,900万円のうち、半数近くは70歳以降に発生するとされています。

出典:厚生労働省「生涯医療費」

また、介護にかかる一時的な費用(住宅改修や介護ベッド購入など)の平均は47万円、月額費用は在宅介護で平均5.2万円、施設介護で平均13.8万円です。

出典:生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」

ほかにも、老後生活では以下のような予想外の支出が発生するケースが少なくありません。

  • 子どもへ資金援助をした
  • 退職金の運用に失敗した
  • 思わぬ形で詐欺に遭った

これらの理由で資産が大きく減ると、老後破産に陥ってしまう恐れがあります。

3.5 世帯収入が減少した

熟年離婚や配偶者との死別によって世帯収入が減ることも、老後破産の原因の一つとなります。

離婚した場合は、結婚中の厚生年金の保険料納付記録を夫婦で分割し年金額に反映させる年金分割の制度が利用できます。しかし、年金分割によって増える可能性がある金額は月額3万円程度であるため、支出が多い場合や国民年金しか受給していない場合などは家計が成り立たなくなる恐れもあります。

出典:厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

配偶者と死別した場合は、遺族厚生年金を受け取れるケースもありますが、配偶者が国民年金しか受給していなかった場合などは遺族厚生年金を受け取れないため、世帯収入が大きく減少することもあるでしょう。

4. 老後破産しやすい人の特徴と共通点

老後破産しやすい方には、以下のような共通する特徴があります。

  • 支出が多く家計管理ができていない
  • 老後資金を十分に確保できていなかった
  • 老後のシミュレーションができていない

ご自身に当てはまる点がないか確認してみましょう。

4.1 支出が多く家計管理ができていない

日頃から支出が多く家計管理ができていない方は、老後破産に陥りやすいでしょう。「給料が入ったら使いたいものに使い、残ったら貯蓄する」というお金の使い方をしていると、なかなか貯蓄は増えません。

また、クレジットカードのリボ払いを多用していたり、キャッシュレス決済で「今月いくら使ったか」を正確に把握していなかったりする方も注意が必要です。収入が多かった現役時代の金銭感覚が抜けきらないまま老後を迎えると、家計が赤字続きになり、老後破産する恐れが高まります。

4.2 老後資金を十分に確保できていなかった

現役時代に老後の生活費として十分な資金を確保できていなかった方も、老後破産のリスクが高くなります。

2019年に金融庁が発表した「高齢社会における資産形成・管理」では、高齢夫婦無職世帯の平均的な収支をベースにした場合、老後30年間で約2,000万円の金融資産が必要になると試算され話題となりました。

もちろん、この金額はあくまで平均的なモデルケースであり、必要な額はライフスタイルや家族構成によって異なります。

しかし、「子どもの教育費負担が重かった」「非正規雇用で退職金がない」「病気で働けない時期があった」など、さまざまな理由で十分な貯蓄ができなかった場合、年金収入だけでは生活が厳しくなるでしょう。

4.3 老後のシミュレーションができていない

老後の生活を具体的にイメージできておらずシミュレーションが不足している場合も、老後破産のリスクが高まります。

「退職すれば支出は減るだろう」と安易に考え、年金額や退職金額、退職後の支出(医療費や介護費など)の見通しを立てていないと、毎月の赤字が積み重なり、生活が苦しくなってしまう恐れがあります。

5. 老後破産を防ぐために知っておきたい5つの対策

老後破産を防ぐためには、以下のような対策が有効です。

  • 家計の見直しと資金計画を行う
  • 事前に老後資金を確保する
  • 早めにローン返済をする
  • 健康を心がけて、年金以外の収入を確保する
  • 公的制度や資産活用制度を上手に利用する

現役時代からの行動と考え方次第で老後破産のリスクは軽減できます。以下にて詳しく解説します。

5.1 家計の見直しと資金計画を行う

老後破産を防ぐための第一歩は、現在の家計を正確に把握し、将来の資金計画を立てることです。まずは家計簿アプリなどを活用し、支出を見える化しましょう。特に、通信費や保険料、サブスクリプションサービスといった固定費は、一度見直すと節約の効果が長く続きます。

そのうえで、いつまでにいくら貯めるのかという具体的な資金計画を作成します。自分だけで計画を立てるのがむずかしい場合は、ファイナンシャル・プランナー(FP)などお金のプロに相談し、客観的なアドバイスをもらうとよいでしょう。

5.2 事前に老後資金を確保する

家計を見直して余裕が生まれたら、計画的に老後資金を確保していきましょう。貯蓄が苦手な方は、給与天引きや自動積立定期預金などを利用して強制的にお金を貯める先取り貯蓄の仕組みを作るのがおすすめです。

預貯金と並行して、税制優遇制度である少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)を活用した資産形成も検討しましょう。NISAやiDeCoは運用益が非課税のため、効率よく資産形成ができます。

特にiDeCoは掛金が全額所得控除になるなど税制上のメリットがあり、原則60歳まで引き出せないため、老後資金作りに適しています。

5.3 早めにローン返済をする

住宅ローンなどの返済が残っている場合は、老後の家計を圧迫しないよう、早めの完済を目指しましょう。資金に余裕があるときに元金の一部または全部を返済する繰り上げ返済を活用すれば、その分の利息負担を軽減できます。

ただし、繰り上げ返済によって手元の現金(病気や失業に備える生活防衛資金)を減らしすぎないよう注意が必要です。

5.4 健康を心がけて、年金以外の収入を確保する

健康を維持してできるだけ長く働くことも、老後破産を防ぐための有効な対策です。定期的な運動やバランスの取れた食事、健康診断の受診を心がけることで、将来の医療費支出を抑える効果が期待できます。

健康であれば、定年後も短時間パートなどで働いて年金以外の収入を確保する道も開けるでしょう。

5.5 公的制度や資産活用制度を上手に利用する

老後の収入を増やせる公的制度や資産活用の方法を知っておくことも重要です。たとえば、公的年金の受給開始を66歳以降に遅らせる年金の繰下げ受給を活用すると、1ヵ月遅らせるごとに受給額が0.7%増額し、最大で75歳まで繰り下げると84%増額した年金を生涯受け取れます。

参照:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

持ち家がある場合は、自宅を売却して資金を得ながら賃貸物件として自宅に住み続けるリースバック、自宅を担保に融資を受けるリバースモーゲージといった制度も活用できます。

こうした対策に加えて、万が一生活に困窮したときに備え、地域包括支援センターや自治体の福祉課といった相談窓口を把握しておくと、より安心な老後生活を送れるでしょう。

6. まとめ

現役時代と同じ生活レベルで過ごしていたり、収支の管理ができていなかったりすると、老後破産のリスクが高まります。老後の生活では収入源が限られるうえ、医療費や介護費など予想外の支出が発生することも少なくないため、計画的な準備が必要です。

まずは、ねんきん定期便で将来の年金額を確認する、家計簿をつけて収支を把握するなど、自身の現状を把握することから始めてみましょう。